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勤務先から退職届の提出を求められたら

会社が従業員を解雇したいと考えた場合に、「解雇もやむを得ないと思っているが、あなたの将来のこともあるので、自ら身を引いていただいたらどうか。退職届を出してもらえれば、自己都合退職扱いにできる。」などと言いながら、労働者に対して、退職届を提出するよう求めることがあります。

勤務先の会社からこんなことを言われたら、どうすればいいでしょうか。

会社が退職届の提出を求める理由

会社は、なぜ、労働者に退職届の提出を求めるのでしょうか。

労働者のために親切心から言ってくれている場合もないわけではないでしょうが、多くの場合は、労働者のためではなく、会社のために退職届を求めているのです。

解雇権濫用法理整理解雇の4要件のページで述べたとおり、法律上は、解雇はかなり厳格に制限されています。
「解雇」という形で雇用契約を終了させた場合には、後日、労働者から「不当解雇だ」と言われて解雇の効力を争われる可能性があり、裁判で敗訴すると、
会社は、その間の賃金を解雇の時点まで遡って払わないといけなくなります(バック・ペイ)。

実際には、解雇後、労働者はその会社で就労していなかったのに、です。
(理論的には、使用者の責めに帰すべき事由によって債務の履行(労務提供)が不能になったのだから、その危険は使用者が負担しなければならない、と説明されます。)

これは、会社側にとっては非常に大きなリスクといえるでしょう。

しかし、退職届があれば、会社は、「うちは解雇なんて言ってませんよ。あなたが自分から『辞めます』と言っただけじゃないですか」という説明ができます。
このようにして、不当解雇で訴えられるリスクを未然に摘んでしまおう
と考え、退職届の提出を求めるケースが多いと思われます

退職届を出すべきか

会社から言われたとおりに退職届を出すべきでしょうか。

正当な解雇理由がない場合は、退職届を提出すべきではありません。 
本来なら勤務を継続できたところが、退職することとなってしまうからです。
再就職先がすぐに見つかるとは限りませんし、失業手当の受給についても、自己都合退職であれば3か月間の給付制限がかかってしまいます。
このため、退職届を出せば、一定期間、収入が途絶えてしまう可能性が非常に高くなります。 

ただし、すぐに再就職ができる方であれば、正当な理由がないのに解雇しようとするような会社には早めに見きりを付けるというのも、1つの選択肢かもしれません。

懲戒解雇事由が認められるような場合であれば、退職届の提出に応じた方がよいかもしれません。
懲戒解雇であれば、 解雇予告期間なしの即時解雇、退職金不支給とされる場合が多く、また、失業手当を受給する上でも、自己都合退職の場合と同様に3か月間の給付制限がかかり、少ない給付日数となるのが通常と思われるからです。
そうであれば、これらの点では自己都合退職の場合と差はありませんから、再就職のことを考えれば、履歴書に書きにくい懲戒解雇よりも、自己都合退職の方がよさそうです。

ただし、本当に懲戒解雇を相当とする理由があるのかどうかは、よく吟味しなければなりません。

では、普通解雇で、正当な解雇理由がある場合は、どうでしょうか。

厳密には、退職金規程等を確認しなければいけませんが、普通解雇の場合、通常は、30日の解雇予告期間(または解雇予告手当の支払い)が必要とされ、退職金の制度がある場合は、退職金も、会社都合退職の支給率で支給されます。
退職金の支給率は、自己都合退職の場合よりも会社都合退職の場合の方が高いのが一般ではないでしょうか。
失業手当も、3か月間の給付制限がなく、自己都合退職の場合よりも給付日数が多くなります。

そうすると、「再就職の時に履歴書に書きにくい」という問題はありますが、普通解雇(正当な解雇理由がある場合)については、退職時の経済的給付の面だけで考えれば、退職届を出す方が「損」といえそうです。

とはいえ、退職届の提出に応じても、会社からの退職勧奨があったものとして、離職票は会社都合で発行してもらえる場合もありますから、退職届を出す場合の条件をよく確認し、再就職のことも考えた上で、最終的にどのように対応するかを決める必要があります。
これらの退職条件の面で十分な配慮をしてもらえるのであれば、退職届に応じることも検討に値すると思います。


 ※ 失業手当の受給については、ハローワークインターネットサービスで詳細をご確認ください。

退職届の提出を求められた場合の対処方法

以上に述べたことからすれば、会社に言われるまま退職届を提出するのが必ずしも得策とは思えません。

懲戒解雇の場合は、退職届を出した方がよいという可能性がありますが、過去に何度も懲戒処分を受けている、社内で暴行、傷害、横領、窃盗等の犯罪行為を行った、会社の名誉・信用を著しく毀損するような行為を行った等といった事案でない限り、通常は、懲戒解雇をするのは容易ではありません。
懲戒解雇は、普通解雇よりも、かなりハードルが高いのです。

普通解雇についても、解雇権濫用法理による規制があるため、退職届の提出を拒否すれば、会社側が、裁判等で争われることをおそれて、解雇をあきらめるというケースもあると思います。
あるいは、退職届を提出してもらうための条件として、会社側から、離職票は会社都合(退職勧奨)扱いとすることや、退職金等の名目で一定の金銭を支払う等といった提案が出されるかもしれません。

いずれにしても、会社から退職届の提出を求められて、すぐその場で退職届にサインするというようなことは、避けるべきです
退職届は、一旦出してしまうと、原則として、後から撤回することはできません。

あなたとあなたのご家族の人生を左右する大事な問題です。
明らかな不当解雇の場合は直ちに退職届の提出を拒否すれば結構ですが、もし、迷うような場合でも、「家族にも相談したいので」と言って、一旦、持ち帰っていただければ大丈夫です

普通の会社であれば、それを拒否することはないでしょう。

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